白髪

四十路も半ば。

最近、白髪の勢いが完全にこちらの防衛力を上回ってきた。

以前は見つけるたびに一本一本抜いて、「まだ勝てる」と思っていた。今思えば、竹槍で戦車に立ち向かっていたようなものだった。

一本抜けば二本増える。気付けば白髪よりも、自分の髪の総量の方が心配になってきた。

この戦争、勝者はいない。

さらに悲しいことに、白髪は頭だけでは飽き足らない。

ヒゲに現れ、眉毛に現れ、そしてついに下の方にも進軍してきた。

「ああ、お前まで来たか。」

思わずそんな言葉が漏れた。

鏡に映る自分を見ながら、身体中で「老化、営業中。」の看板を掲げているような気分になる。

そこで購入したのが家庭用脱毛器。

スムースエピ パワー&クール(EB-WG0B)

調べて初めて知ったのだが、脱毛器は黒い毛にしか反応しないらしい。

つまり白髪になった毛は、脱毛器から見れば存在しないのと同じ。

人生でも会社でも存在感が薄くなる年頃なのに、毛まで「認識されません」と言われるとは思わなかった。

「全部白くなってからでは遅い。」

そんな切羽詰まった理由で脱毛器を買う日が来るとは、二十代の自分は想像もしなかっただろう。

約2週間で効果実感と聞いていた。使い始めて2週間経過したが、その効果は正直まだ実感できていない。

照射している時間より、「これ、本当に効いてるのか?」と説明書を読み返している時間の方が長い気がする。

四十路になると、髪は欲しい場所から静かに退職届を提出し、いらない場所では終身雇用を主張する。

人体の人事制度には、どうやら合理性という概念は存在しないらしい。

とりあえず、黒いうちに片付けられるものは片付けておこう。

白髪との戦いはもう諦めた。

せめて、下の方だけはこちらの勝ちということにしておきたい。